言葉の芥場

思ってることを、思っているままに。日ごろ、堆積したことばを吐き出す場所。

「天才」で済ませたくない

「天才」と言う言葉を誰かを褒める時に使うのがどうしても苦手です。そのフレーズを使った時点で、そこにたどり着けない自分に言い訳を作っているうえに、その人が裏でしてきただろう膨大な努力に対して敬意を払えない気がしてしまいます。

何となくそんなことをずっと思っていましたが、その考えをより深める本に出会いました。GRIT: The Power of Passion and Perseverance, 日本だと「やり抜く力」という副題で翻訳されている本です。心理学者である著者は、成功する人が必ず持っているやり抜く力、GRITについての研究とそれの育て方を専門にしています。この本のメインテーマは、成功はその人の才能ではなく、やり抜く力、すなわちGRITにかかわるというものです。GRITは情熱と粘り強さの指標で、この二つの要素が夢を叶えたり成功し足りするのにとても大切な役割を持ちます。もちろん、誰しもがボルトのように走れるわけでも、アインシュタインのようになれるわけでもありません。人それぞれ向き不向きはあるし、限界はあります。ただ、成功をつかむために必要なのは突出した才能ではなく、継続的な情熱をもってあきらめずに粘り強く努力することだと、様々なデータや実例をもとに著者は主張しています。

僕自身がずっと思っていたことが綺麗に、論理的に文章化されていてとても感動しました。僕はあまり天才というものを信じていません。もちろん世間的に天才といわれる人達に追いつけるとは到底思っていませんが(特にスポーツや音楽のジャンルでは)、それでも彼らの才能を理由にしてしまうのは嫌です。「彼/彼女は天才だから」としてしまえば、気持ちは楽です。でも、きっと天才といわれる人はみな、自分とは比較にならないだけの努力を陰でしていると思っているし、それが出来なかった自分から目を背けているように思えてしまいます。

さらに、「天才だから」という一言はその人がしてきた膨大な努力に敬意を払えていない気がします。成功を先天的なものを理由にして、その人のかけたエネルギーや時間を無視するのはどうも納得がいかない。だから人を「天才」だと呼びたくはないです。

本の中で、GRITは伸ばすことはできるし、人の能力は、たとえそれがどんなものでも成長するといわれています。このGRITを伸ばすための学校教育や子育てを著者は研究していて、それについても書かれています。自分のGRITを高められるように、そして自分の周りの人のGRITを高める手助けができるようにしたい。

自分の考え方を深めるとともに、大きなモチベーションをくれた、とてもおもしろい一冊でした。